遅くなったが、2021年10月に三重県津市にて開催された、「第39回日本神経治療学会」について述べたいと思う。津市の津駅はJRと近鉄が停まる三重県の県庁所在地である。その駅の規模は、県庁所在地の中では比較的小さめであろう。学会場もコロナ禍で現地出席者は非常に少なかった。ほとんどはオンラインでの視聴者であったと考える。私がオンラインでない、現地開催に拘るのは、その学会場の雰囲気が好きであること、つまりリアルを実感できることによる。今回はそれに加え、私の名前が「共同演者」での発表があったからである。発表者は千葉大脳神経内科教室のDr.で、私の関与する患者さんの発表であった。詳細は控える。個人情報は厳密に守られねばならない。
今回の学会は、Covit-19に関するものは非常に少なかった印象である。神経疾患の難病たる、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、難治性ニューロパチー、認知症などこれから解決されねばならない神経疾患に関してのものが圧倒的に多かった。大きな進展としては、パーキンソン病の病態解明が進んだこと、筋萎縮性側索硬化症に効果的な薬剤開発状況、そして、これは11月に静岡で開催された「第49回日本頭痛学会総会」(こちらも出席しました)でも大きく取り上げられた、片頭痛に対する新規治療薬「抗CGRP抗体製剤」に関するものがあった。抗CGRP抗体製剤は、その名のとおり頭蓋内三叉神経に炎症を惹起する物質である、「CGRP:カルシトニン遺伝子関連ペプチド」という物質の産生を抑制して頭痛発作を抑える薬剤である。注射薬ではあるが、その予防効果は凄まじく、非常によく効く患者さんには、頭痛発作を「ゼロ」近くまで抑え込むことも可能である。それまで毎日のように頭痛で苦しんでいた方にとっては、非常な朗報であろう。当院でも数人の方に治療を行い、今のところは良好な結果を得ている。もちろん不応者(全く効かない人)もいるし、少ないながらも副作用の報告もある。今後、当院でも本年(2022年)2月を目途に、予防的CGRP抗体製剤注射希望の患者さんに対し、本格的な治療をスタートさせる。注射に必要な要件を満たす患者さん(頻度が多い、既存の予防薬の効果不十分、何らかの要因でほかの予防薬が使えない、頭痛発作が非常に重い、など)が対象になるのは当然として、問題はその「お・ね・だ・ん」だ。3割負担でも1回 1万3000円前後かかる。決して安くはない。今のところこればかりは如何ともし難い。
それにしても学会出席は知識の泉である。