東京オリンピック・パラリンピックが開催される模様である。各国の選手が来日を始めている。政治的なことに口出しはしない立場である。しかしながら、選手団、少ないがその関係者が日本国内に「様々な地域、国」からおいでになる。このことの意味を皆、理解しているのであろうか。つまり、さまざまな地域、国々から複数の変異株が大挙して侵入してくる可能性を、「想定」して戦略、戦術を練っているのであろうか。もちろんPCRを含めた検疫は行われるであろう。また、弱毒性のウイルスであるかもしれない。しかしながら、もし、万が一検疫でもわからないウイルス変異株がいたら…。また、強毒性のあるウイルス、あるいは感染性の高いウイルスであったならば…。現在のワクチンで対応出来るのであろうか。私は感染症の専門家ではない。さらにくどいようだが、政治的発言はしない。公明正大な意見としてという意味合いである。しかし科学的な警鐘をしておきたい。杞憂に終わればよいのであるが、念には念を入れるに越したことに異論はないだろう。
なお、ここで免疫系について触れなければなるまい。私は大学生時代、「免疫学ゼミ」に所属し、医学展(医学部の学際)にて「免疫・AIDS展」を主宰した。同級生はもちろん、先輩、後輩、大学の先生方、はてはその道のエキスパートの先生方にも協力を仰ぎ、何とか開催ができ好評を得た。関係協力して下さった皆様に、今でも感謝の念を忘れない。当時AIDSは未知の疾患で、治療法も殆どなく、その原因、発症メカニズム、最新の治療などを紹介した。1988年のことで懐かしい時代である。
さておき、免疫系である。「自然免疫」、「獲得免疫」という言葉がある。ざっくり言えば、前者はもともと持っている免疫で、後者は未知の異物が侵入したときに働き、その働きを記憶して異物を撃退する役割を持つ免疫である。過去に侵入した異物に対して、対抗策を記憶しておくことが獲得免疫あり、これを「免疫記憶」という。従来自然免疫には、免疫記憶がないとされてきたが、自然免疫も免疫記憶を持つということが分かっている。「集団免疫」とはその名の通り、多くの人が獲得する免疫であり、年数がたてば獲得免疫から自然免疫へと移行する。スペイン風邪、あの第一次大戦中に猛威を振るった「強毒性のインフルエンザ」である。これはおよそ3年で収束しているが、その働きには「集団免疫」によることが言われている。今回の新型コロナウイルス感染症も、重症化(強毒性のあるウイルスによる)は、集団免疫が解決してくれることを期待している。今のインフルエンザはスペイン風邪と同じ「H1N1」という種類の弱毒型になると考えられている(ソ連風邪も同様)。
ワクチンを使って強制的に獲得免疫を植え付け、自然免疫に持っていくという手段も理解できる。自然免疫から集団免疫へ緩徐に移行していくことも一つの方法と考える。重症化地域とそうでもない地域に分かれるという議論もある。手洗い、うがい、土足で部屋に入らないという生活習慣も考えられるが、人種差による(HLA:遺伝子形態の一種で、免疫系に関係する:の違い)が関係しているかもしれないし、予防接種の習慣も関係しているかもしれない。清潔といえば「産褥熱」が有名である。昔、出産を扱う産科医の手洗い習慣により、乳児死亡率が激減したという話だったと記憶している。
先日、TVで映画の「宇宙戦争」を放映していた。1898年初出のH・G・ウエルズの古典的SFであるが、1953年に初めて映画化されている。今回TVで放映した「トム・クルーズ」版は2006年であり、パニック映画とヒューマニズムの要素が入っているが、おおよその内容は、原作を踏襲している。火星からの侵略により当初手も足も出なかった地球人であったが、しばらくすると火星人の三足歩行機械が次々に勝手に倒れていく。ネタバレになってしまうが(注意)、地球上にいる微生物が、火星人を倒してしまう、という結末である。無菌状態の火星からやってきた火星人は、抵抗力がなく(免疫機能がないのかも)、皆死亡してしまうというお話である。今考えると奥が深い。そこで、疑問がわく。「なぜ火星人は地球の大気を事前に調べなかったのか」である。無粋なことは言わない。物語が古いからではなく、「火星人に、微生物(ウイルスを含む)の概念がなかったから」と解釈している」…私としては。さて、三足歩行機械であるが、私には昔のアニメ「伝説巨神イデオン」の敵役の宇宙人「バッフクラン」のロボット(宇宙船)、「ガンガルブ」に似ているよう見えて仕方がない。余談である。
ついでに「コラッツ予想」という数理問題がある。最新号の「子供の科学」に分かりやすく出ているが、概略を申せば、ある単純な計算をしていくと、どんな数で初めても「1」という整数に収束する、という予想である。これは未解決命題であり、証明はされていない。ウイルスの収束をコラッツ予想で解決する論文がないかと検索したところ、高校生が一つ書いていた。探せばもっと出てくるかもしれない。さらに余談であるが「コラッツ予想」のヒントは長男が私にくれたものだ。いずれにせよ、人類の叡智に期待したい。